仲直りkiss 雪兎編
文章は最後まで記載しておりません。明日は休日。
速水先輩と、昼からデートの約束をする 。
みやび
「はい、わかりました。それじゃあ11時 に……」
雪兎
『あぁ。くれぐれも寝坊しないようにな ?』
雪兎
『朝は自宅まで迎えに行く』
みやび
「いつもすみません……」
みやび
「それじゃあ、また明日……」
電話を切り終えて、そのままベッドに倒 れ込む。
みやび
「楽しみだなー」
みやび
「よし、今日はもう早く寝よう!」
早めに起きて支度もばっちりしようと、 まだ少し早い時間だったけどベッドに入 る。
そうして私は枕元で鳴る携帯電話に気づ かぬまま、眠りについた。
翌朝。
部屋を訪れた母親
の声で、私は目を覚ま した。
母親
「みやび!みやびたら!」
母親
「やだ、まだ寝てるの?もう雪兎くん いらっしゃったわよ?」
みやび
「ん……。……えっ!?」
その言葉に、慌てて飛び起きる。
目覚まし時計を見ると、9時を示してい た。
みやび
「あれ?……9時?」
止まっているのだろうかと確認してみて も、時計はかちこちと音を立てている。
雪兎
「……坂口」
にっこりと笑顔を浮かべて部屋の前に立 っている先輩を見て、さぁっと体温が下 がっていくのを感じた。
みやび
(これは……怒ってる……)
みやび
「え……あ……速水先輩……」
母親
「もう、ごめんなさいねぇ、雪兎くん」
母親
「今お茶でも用意するわ」
雪兎
「あぁ、いえ、お構いなく」
雪兎
「休日の朝からすみません」
母親
「あら、いいのよ。
いつでも大歓迎だわ 」
そう言いながら部屋を出て行った母親
を 見送って、扉を閉めた瞬間…… 速水先輩の表情が、変わった。
雪兎
「……携帯を見ろ」
みやび
「えっ、携帯?」
画面をタップしてみると、そこにはいく つもの着信履歴とメールがあった。
速水先輩から予定を変更して9時に迎え に行く、というメッセージが残されてい る。
雪兎
「23時前に連絡して、朝の9時まで連絡 がつかないとは……」
雪兎
「一体お前は、どれだけ寝るんだ」
みやび
「や、休みなんだからいいじゃないです か……」
みやび
「それに、急に予定変更されたって困り ます」
雪兎
「普通に起きて確認すればよかっただろ う」
雪兎
「俺は休みでも6時には起きる」
みやび
「……何でもかんでも、完璧な先輩と一 緒にしないでください」
つい嫌な言い方をしてしまって、部屋の 中に微妙な空気が流れる。
みやび
「……私、別の部屋で着替えてきますね 」
昨夜のうちに用意してあった服を持って 立ち上がる。
めいっぱいおしゃれしようと気合いをい れていたのに、今の私は寝起きのまま… せっかくのデートの朝にそんな姿を見ら れたことも悲しい。
雪兎
「……待て」
部屋を出ていこうとしたところで、速水 先輩が私の腕を掴んだ。
雪兎
「……ひとこと、お前が謝れば許さない こともない」
みやび
「嫌です」
雪兎
「……強情だな、お前は」
みやび
「速水先輩ほどじゃありません」
雪兎
「……おい、こら。こっちを見ろ」
そう私の両肩を掴んだ先輩が、私の顔を 覗き込んだ。
けれど私は、その視線から逃れるように 顔を逸らす。
雪兎
「……いつまでもそうしているつもりな ら」
雪兎
「このまま押し倒すぞ」
みやび
「……ソレは嫌です」
雪兎
「……」
みやび
「でも、謝るのも嫌です」
雪兎
「お前な……」
ふいにチラっと時計を見た速水先輩。
雪兎
「……無理か」
みやび
「……?」
雪兎
「このままじゃ、間に合わないな……」
みやび
「一人で、何を言ってるんですか?」
先輩は、ため息をついて私の身体を離す とベッドに腰掛ける。
雪兎
「実は、今両親がこっちに来てるんだ」
雪兎
「少しだけ時間が出来たから、家にも寄 るらしくてな」
雪兎
「……お前にも会わせたかったんだが… …」
みやび
「え……」
雪兎
「急な予定変更は、強引だったな」
みやび
「……」
雪兎
「まあ、いい。俺は一旦家に帰る」
雪兎
「それから元々の予定通り、また迎えに 来るから……」
雪兎
「お前は、それまでに機嫌を直せ」
雪兎
「冗談でも、お前に拒絶されるのは好き じゃない」
そう言って部屋を出ていこうとする先輩 。
その腕を今度は私が掴んで引き止める 。
みやび
「ま……待ってください!!」
みやび
「あの……寝起きの顔でも、いいですか 」
そう言うと、速水先輩は目をきょとんと させる。
雪兎
「……」
それからふっと、力が抜けたように笑っ た。
雪兎
「……大丈夫だ」
雪兎
「お前はいつでもカワいいだろ?」
そんな速水先輩の言葉に笑って、私は今 度こそ着替えるために部屋を出ようとす る。
ところが扉に向かおうとしたところで、 後ろから伸びてきた手が私の腰を強く引 き寄せた。
雪兎
「待て」
雪兎
「そう急ぐな」
みやび
「……時間、ないんじゃないですか?」
雪兎
「お前とキスをする時間くらい、いくら でもある」
耳元で囁く速水先輩は、後ろから回した 手で私の顔を傾ける。
目を閉じると甘いキスが落ちてきて、唇 が離れると自然と笑いがこぼれた。
雪兎
「……悪かったな」
みやび
「……私こそ」
雪兎
「……しかし……困ったな」
雪兎
「ちょっと今、離れがたい」
みやび
「急がないと、ご両親帰っちゃうんでし ょう?」
雪兎
「……わかってる」
先輩は私の首元に頭を預けて、後ろから ぎゅうっと抱きしめる。
みやび
「私会ってみたいです。
先輩のお父さん と、お母さん……」
雪兎
「……あと十数えたら、離れる」
その言葉と裏腹、先輩は一層私を強く抱 きしめると、首元にキスを落とし始めた 。
みやび
「先輩!ご両親が待ってますよ……!! 」
雪兎
「そんなことより、お前」
雪兎
「……俺たちが今、腰掛けているのはド コだ?」
みやび
「……私の、ベッドです」
雪兎
「お前は、不用心だな」
みやび
「これは、先輩のせいじゃないですか… …」
雪兎
「……」(ニヤニヤ)
雪兎
「…………」(真顔)
雪兎
「仕方ないから、今は我慢してやる」
そう意地悪に笑った後、ようやく抱きし めた手を開放した速水先輩。
雪兎
「……たまには喧嘩も悪くないな」
艶っぽい声で呟くと、すぐに私の肩を後 ろから軽く叩く。
雪兎
「おい、早く着替えて来い」
みやび
「へ……?」
雪兎
「間に合わなくなるだろ!?」
みやび
「は!?だって、先輩が……!」
雪兎
「なんだ?まだ俺に何か言いたいことが あるのか?」
みやび
「……!!?」
これから先も速水先輩とは、たくさん喧 嘩しそうだ。
だけど、そのたびにこうやって仲直りで きるなら……それもイイかもしれない。[br][br]