シンデレラのストーリー考察 ※ネタバレ注意
シノアリスにおけるシンデレラのストーリーについて掲載しています。衝動篇や憎悪篇のストーリーを掲載しています、ネタバレになるのでまだプレイしていない人や、ストーリーを知りたくない人はご注意ください。
※ゲーム内より引用
衝動編 第一章
一節
シンデレラは嘲笑う。今さら得た命なんて何になる?どうせなら楽しく使わなきゃ。
自分を馬鹿にした母と姉たち。優しいだけの間抜けな王子様。全部ぜーんぶ書き換えよう!その為には、とても面倒くさいけど。死者の国からクソ作者にお出まし願わねば。
それには供物が必要だ。シンデレラは笑う。これから重ねる犠牲の数を数えて。
二節
灰かぶりと馬鹿にされ、さげずまれて生きてきた魂が、簡単に救われるとでも思ってた?
三節
例え誰かに愛されて、幸せの中で過ごしても、足蹴にされた過去は変わらない。
四節
心の傷は治らない。愛や時間が全てを癒すなんて、甘ったるい幻想を信じてる?
五節
受けた傷はじくじくと広がり、膿んで爛れて腐臭を放ち、いつか心を蝕むの。
六節
どうして自分だけ我慢する?傷つけられたら、傷つけ返そう?同じ―――いやそれ以上の痛みを与えよう
七節
歪むのは簡単。自分の欲望を認めればいいだけ。
八節
邪魔する奴は消せばいい。出来る限り優しく、出来る限り苦痛を長引かせて。
九節
ほら見てごらん。痛みに歪む敵の顔。ああーーーなんて気持ちがいいんだろう!
十節
ふと、鏡を見た。そこに映る女はとても楽しそうで、心から今の状況を楽しんでいるらしい。口元に浮かぶうっすらとした笑み。歪んだ目元。そのどれもが美しい。
ーーーああ、そうだ。これこそが私の本当の姿ーーー シンデレラは笑いながら、次の供物に武器を突き付けた。
シンデレラは気づいた。他人を欺く楽しさに。他人を従える悦びに。シンデレラは気づいてしまった。人に足蹴にされて生きてきた。男の気まぐれな愛で救われた。
それらは全て、クソッタレな作者の都合。それなら作者すら欺いて 自分に都合の良い物語を書かせよう。
卑劣 それは、シンデレラを焦がす、炉の埋み火。
衝動編 第二章
※第二章はシンデレラとグレーテルのクロスストーリーとなります。
一節
ある日、卑劣と妄執が出会った。
いつもの通り、シンデレラは言葉の刃を投げかける。いつもの通り、少女は鳥籠の中の首に話しかける。
一方的な言葉。嚙み合わない会話。相手を傷つけて楽しむ、卑劣を謡う灰かぶり。けれど彼女は、珍しく眉を顰めた。
二節
以下シンデレラのセリフ
その夢見る瞳を曇らせて。微笑む口元を歪ませたい。それなのに、アイツに言葉は届かない。
三節
以下グレーテルのセリフ
ねえ、兄様。愛しい兄様。私達はいつでも一緒。2人で1つ。兄様は私。私は兄様。兄様、兄様、大好きです。
四節
以下シンデレラのセリフ
あの虚ろな瞳を傷つけるには どうしたらいいだろう?何が一番有効かな?ああ、考えるのが楽しくて仕方ない!
五節
以下グレーテルのセリフ
兄様は時々お返事をしなくなる。怒っているの?どうして?それは、私が・・・
六節
以下シンデレラのセリフ
じっくりゆっくり観察して、相手の一番大切な物を、刃で一気に切り裂くタイミングはいつ?
七節
以下グレーテルのセリフ
私の一番大切な兄様。私があなたを守ります。意地悪な魔女のお腹に収めてなるものか。
八節
以下シンデレラのセリフ
なあ、一つ聴いていい?アンタの大事な兄様は、とっくの昔に死んでいる。ーーー誰が、兄様、殺したの?
九節
以下グレーテルのセリフ
生きている、兄様は生きている。生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きてーーー
じゃあ、死んだのは、誰?
十節
あなたは魔女?そう呟いた少女の声は低い。だったらどうする?と口元を歪めて笑うシンデレラ。
それは軽い挑発。ようやく自分を見た少女に やっと届いた言葉の刃。けれど、それは両刃の剣。いつも空を漂う虚ろな瞳。そこに、憎悪の炎が灯された。
魔女魔女魔女魔女。魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女魔女。
何度も何度も呟きながら 少女は敵に刃を振り下ろす。だからこそ、気づいてしまった。兄を殺したのは彼女なのだと。
ああ、それは何て悲しく 何て愚かで なんてーーー面白いんだろう。虚妄の君を憐れんで、卑劣は笑う。最高の喜劇をありがとう、と。
衝動編 第三章
一節
12時の鐘に 怯える自分はもういない。魔法をかけた魔女も かぼちゃの馬車も 必要ない。彼女はそれだけの強さを手に入れた。
ああ、それなのに。この忌々しいガラスの靴だけ 捨てられないのは何故だろう。
二節
きらきらと。綺麗な光が透き通る。大切な大切なガラスの靴。
三節
1人の姉はつま先を、もう1人の姉はかかとを斬り落とし、
そうまでして履きたかったガラスの靴は、私のものになっちゃった。
四節
どんなに歪んでも。どんなに血に汚れても。ガラスの靴は穢れない。
五節
優しい優しい王子様。ガラスの靴を履けたなら、相手は誰でも良かった?
六節
綺麗な綺麗な王子様。ガラスの靴が履けないと、愛した人の顔もわからなかった?
七節
幸せな幸せな王子様。ガラスの靴を落とさなかったら、あなたは私を諦めた?
八節
間抜けな間抜けな王子様。アンは本当に鈍くて 愚かでつまらない、作者都合の操り人形。
九節
ガラスの靴は私の証拠。私が私である為の道具。だからーーー誰にも渡さない。
十節
目の前に、ガラスの靴を履いた女がいる。あれは私のもの。私にしか履けないもの。
ではーーーあれは誰だ?私によく似た、アイツは誰だ?・・・ああ、そんな事はどうでもいい。あれは、私のものなのだから。
一気に、じっくり、ゆっくりと。泥棒猫の足首を ガラスの靴ごと砕きましょう?
闇に堕ちた自らの姿を踏みにじり、シンデレラは目を細める。例えあり得る姿だとしても、それが一体なんだって?
灰は灰。黒くなれても白くなれないこの身なら、いっそ真っ黒になればいい。
ああ、だけど。一人で黒くなるのはつまらない。どうせなら、周りを全て巻きこもう。灰かぶりは楽しげに笑った。
衝動編 第四章
※第四章はシンデレラとスノウホワイトのクロスストーリーになっています。
一節
純白の正義と黒灰の卑劣。あまりにも相性は最悪で、笑えるほどに正反対。スノウの瞳は嫌悪を浮かべ、シンデレラの口元は嘲りに染まる。
許せない。殺したい。ぐちゃぐちゃにしたい。正したい。作者の復活のためにその欲望を真綿で包み、二人は視線を交わし合った。それは決して理解し合うことのない嫌悪の同盟
二節
己の事に終始して、主すら道具とするなど 私には考えられない。あの人は間違っている。
三節
独り善がりを押し付けて さぞかし気持ちがいいだろう?なぁ、偽善に塗れた白いお姫様。私はアンタを汚したい。
四節
あの歪んだ笑顔を正し、その嘲る目元を正し、この罵る舌を正したい。正しき道を示したい。
五節
あのまっすぐな瞳を潰し、そのきりっとした口元を歪め、この清廉な顔をぐちゃぐちゃにしたい。ああーーーなんて甘美な愉悦だろう!
六節
間違っている者を正すのも 正義の務めであるならば、私は彼女の導き手となろう。
七節
導き手?じゃあお願いしようかな。誠実に、律儀に、従順に応えるよ。裏切られた時のアンタの顔が見たいから!
八節
許し難き卑劣。度し難き歪み。正義の前にーーー斬り落としたい。
九節
アンタのは私怨。そこに正義はない。だから私を殺したら アンタの正義は死ぬんだよ?それでよければ、さあこの首をどうぞ?
十節
ああ限界だ!そう言ったのはどちらが先?自分を正しいと信じるお姫様 この世を斜めに見ている灰かぶり どちらが先かなんて関係ない。殺し合えればそれでいい!
でもそこに運悪く。ナイトメアが現れた。ああ、何て可哀想。どうして?倒す理由が八つ当たりだからさ!
憐れドラゴン八つ当たり。八つ裂き、串刺し、滅多刺し!皮肉にも、スノウとシンデレラの攻撃は とっても息が合っていて。はたから見れば親友のよう。
だから、スノウは ますます嫌悪を募らせる。だから、シンデレラは ますます愉悦に歪んでいく。
正義と卑劣。それは決して交わることのない 写し鏡の二人の物語。
憎悪編 第一章
一節
シンデレラは笑っていた。自らの呪縛を思い、嗤っていた。この身を捕えるものが卑劣なら それは何て素晴らしい事だろう。
物語の中では馬鹿にされ、蔑まれて生きてきた。そんな魂に卑劣以外の何が宿ろうか。
ならばその呪いに、思う存分この身を任せるだけーーーシンデレラは楽しそうに 口元を歪めた。
二節
自分の立場を理解できずに 嘆くだけの生き方には、もう飽きた。
三節
感情を抑えつけて 建前を言うだけの生活は もういらない。
四節
与えられたものは受け入れる。受け入れ、そして利用する。
五節
殺す事に迷いなどない。迷うほどの感情もない。
六節
自分の為に 自分の感情すら利用する。ましてや他人の想いなど
七節
誰が何の為に生きようが 誰が何の為に死のうが 私には関係ないのだから。
八節
さあ、泣きなさい。己の立場を呪いなさい。背負わされた運命に絶望しなさい。
九節
嘆く奴らは踏みつぶし 全てを私の糧にする。
十節
豚の姿をしたナイトメアは 鼻息荒くも呟いた。
ボクはタダ、生きタイ。食ベラレル事ナク、生きてイタイ。ダカラ僕ハここで生キル。
魂を引き裂くようなその叫びに シンデレラは優しく微笑んだ。
「豚は豚だよ?何度生きても何度死んでも アンタは美味しく 食べられるのさ!」
豚じゃナイ。食ベラレル為に生まれたワケじゃナイ。
血反吐のような嘆きと共に オークは命の火を消した。肉の塊となったそれを人蹴りすると、シンデレラは火を放った。
さあ、ディナーの時間です。義母さま、義姉さま、今日のメニューは美味しい美味しい ローストポークですよ!
衝動編 第二章
第二章はシンデレラとピノキオのクロスストーリーとなります。
一節
嫌な相手に会ったと ピノキオは思った。面白い相手に会ったと シンデレラは思った。
さて、卑劣の灰かぶりと 依存の人形の相性は?1人は恐怖に、1人は愉悦に、顔を歪めた。
「最悪だ」「最高だ」
二節
苦手なひとに会った。僕は指示して欲しいだけで 虐めて欲しい訳じゃないのに。
三節
虐めて欲しい顔をしている奴を 虐めても面白くない。虐めないで、という顔をしている奴を あげつらうのが面白い。
四節
こういう時に限って杖は黙る。まるで僕が困るのを 楽しんでいるかのよう。
五節
右を向けと言えば右を。左を向けと言えば左を。なんて面白い玩具だろう!
六節
シンデレラさんの言う事は 無茶苦茶で理不尽で。でも指示されると安心してしまう 自分もいて。
七節
私の指示に嫌な顔をしながらも、忠実に付いてくるこの子にーーー物語の中の「私」が被った。
八節
元は人形だから、人の意のままになりたい。今は人間だけど、誰かに指示されたい。僕が肉の体を持つ意味は何?
九節
意志のない人形は 壊した く な る。
十節
卑劣のシンデレラと依存のピノキオ。微妙な均衡を保つ2人の前に、不思議な存在が現れた。
「なんだ、アレ」「まさか・・・幽霊!?」 怖がりなピノキオはシンデレラの背中に隠れてしまう。
「まあ、何にせよーーー」 倒すだけだと舌なめずりして、シンデレラは怯えるピノキオを前に押し出した。
肉体を持たぬ思念体。それは果たしてナイトメア?ナイトメアとはいったい何?けれど、そんな疑問より。心だけの存在はーーー
「僕より」「アンタより」「人間らしい」
互いのつぶやきが重なり合って ライブラリの中に溶けていく。悲しげな顔をしたピノキオは、杖を手にして シンデレラの前から姿を消した。
憎悪編 第三章
一節
ピノキオと分かれたシンデレラは
物語を思い出していた。
意志を持たぬ 流されるだけの人形。
それは多分、以前の自分。
灰かぶりの悲しき召使。
けれどそれは、
皇子の気まぐれによって救われた。
それはきっとーーー
シンデレラが美しかったから。
二節
美人とブスが同じことを言ったら、
あなたはどちらを信じるの?
三節
美人とブスが同じ事をしたら、
あなたはどちらを褒めるの?
四節
美人とブスが泣いていたら、
あなたはどちらを慰めるの?
五節
美人とブスが人を殺したら
あなたはどちらを罰するの?
六節
私が綺麗だったから、王子様は私を選んだ。
私の性格も何も知らずに、外見だけで私を選んだ。
七節
私が醜く生まれていたら 一生暖炉の灰かぶり。
魔女もかぼちゃの馬車もやってこない。
八節
醜いものは高望みしてはいけない。それが物語のルール。
美しいものだけが救われる。それが物語のルール。
九節
醜いだけで、それは罪。
十節
無益ナ争いハ止めまショウ?
8本の足をカサカサと震わせて スパイダーは訴えた。
私がナニをしましタカ?
アナタが私を倒す理由は ナンデスカ?
その問いにシンデレラは答えた。
「醜いから」
「醜いだけで、アンタは 殺される理由があるんだよ」
憐れな心優しきナイトメア。
最後まで平和を訴えたスパイダーは
その8本の足をぶちぶちともがれた。
体を貫かれ地面に縫い止められた姿は、
まるで子どもが作った標本のよう。
びくびくと痙攣を起こす蜘蛛に
シンデレラは嗤う。
「いい?見た目が悪いってだけでーーー罪なんだよ?」
囁かれた優しい声に包まれて、
スパイダーは動かなくなった。
衝動編 第四章
一節
シンデレラは認めた。
己の美しさの価値を。それゆえの残虐性を。
美しいものだけが救われる世界。
醜いものは酷い目を見る世界。
それが作者が自分に与えた世界。
ならば、それに従おう。
汚いものは全て消して、命を奪って糧としよう。
それが、美しく生まれたものの義務。
二節
醜いものに抱く感情を 否定する事は出来るだろうか?
三節
醜いものを触りたい?醜いものを愛したい?
ああ、素晴らしい。頷ける人はなんて偽善!
四節
汚いものを見たら、目を背けるでしょう?
でもそれは自然な感情。
隠さないで、さらけ出して。
五節
物語を読みましょう。
ほらご覧。
救われるのは「綺麗なもの」ばかり!
六節
作者の本音。作者の真実。
それは物語の中にある。
七節
幸せを掴む条件は簡単。
元から綺麗であること、ただ一つ。
作者はそれを知っている。
八節
「綺麗なもの」には幸せを。
「醜いもの」みは災難を。
「ほどほど」には影が薄い脇役を。
九節
卑劣で綺麗な私には
醜いものを殺す権利がある。
十節
豚の姿をした小さなオークたちは
口々にシンデレラを罵った。
シンデレラの皮肉、シンデレラの残虐さ、
その全てが非道であると罵った。
一理ある、とシンデレラは頷いた。
「私は卑劣だから、酷い事もしただろう」
「でもね?」
「豚は何を喚いても豚だよ?」
そう告げた 灰かぶりの目は 嗤っていた。
たくさんの醜い小さなオークは
たくさんの美味しい肉の塊となった。
この腸は肉詰めに。この肉は燻製に。この内臓は塩漬けに。
醜いだけの命が 美しいものの糧になるのなら、
それだけで生まれてきた価値がある。
「そうだろう?」
美味しそうな肉を 手にしたシンデレラは、
次々と鮮やかに料理を並べていった。
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