絵本的なアートを感じ心温まる花蟲氏の名作「ポックのともだち」の感想・レビュー
心和む穏やかでアート的なポイントクリックアドベンチャー「ポックのともだち」のプレイ雑感レビューです。面白いスマホゲームを探している場合の参考にしてください。
ポックのともだちとは
初出は2005年頃から公開中のPCで遊べるフラッシュゲームです。2014年後期にCYGAMESのちょげつくからスマホ版が配信されました。ジャンルはポイントクリックアドベンチャーです。同種のジャンルだと最近でいえばAmanita Design作「Machinarium(マシナリウム)」が有名ですね。ポックのともだちの作者は花蟲さん。独特のキモカワ系イラスト・アニメーションを創作しているデザインアーティストです。
ゲームは気になるところをクリックしたり簡単な謎を解きながら、ひとりぼっちの少年ポックが小鬼のタムと友情を結んでいく話を展開しています。文章をなるべく使わず絵や動きで表しているのが特徴ですね。
ポックのともだちのレビュー
穏やかでアート的な雰囲気の世界観
ゲーム作者の花蟲氏はゲーム製作もしますが、本業は(ゲーム製作も本業ですが)ガチのアートデザイナーさんです。漫画やゲームのイラスト専門のデザイナーとは異なる観点、独自の視点からゲームアートを設計しており、摩訶不思議で穏やかな世界観を楽しめます。また、花蟲氏はインタラクティブ作品も手がており、歩く時、喋る時のSE音は気持ちよく、ポイントをクリック後の風景動作などもワクワクする作りです。アート的な完成度、物語としての面白さが両立しています。通常の脱出ゲームなどに慣れているユーザーからすれば新鮮なプレイを、そしてアートイベントによく参加するユーザーにも満足いく出来です。
ゲームのどの場面もアート的な美しさで覆われて、目の保養になる空間になっています。
心温まる少年ポックが小鬼のタムの友情譚
物語のテーマは「友情」です。ポックは今までひとりぼっちで過ごしてきたため他人との付き合い方が分かりません。また、他人と付き合う事をとても恐れています。そんなポックと仲良くなりたがっているタム。この2人がだんだんと心を通わせていく過程がゲームの中で表現されています。興味深い点は文字を最小限に絞っている事。オープニングと中間点、エピローグで多少の文字説明があるものの、ゲーム本編では一切、文字を使わずにキャラや物体の動作・音楽・光の加減など映像で全てを表現しています。
また、結末はゲームのプレイ方法に合わせて4つのエピローグに分岐します。それぞれ興味深く、プレイヤーの行動結果でポックとタムの友情がどうなっていくかも変化します。
左ポック、右タムです。ゲーム中はこの2人の動作に注目です。いろいろと細かな動きをみせています。
ゲーム中の1シーン。このような友情に関する場面がゲーム進行に合わせていくつか存在します。
ボスの凶悪度
各所で不満が続出している問題です。ポックのともだちは難易度を抑えて誰でもクリアできるよう設計してあります。ポイントクリックアドベンチャーが始めての人でも問題ないでしょう。難易度が低い理由はゲームを楽しむ事でなくゲームというインタラクティブなメディアで物語やアートを楽しむ事を考慮して開発したからだと推測できます。そんな中、いきなり難易度が上がる点がラスボスの凶悪的な強さです。ラスボスが黒い瘴気を放つので、ポックはそれを跳ね返せばいいのですが、跳ね返すポイントが掴みづらくなっています。何度も試せばいずれタイミングを掴み、簡単にクリアできるようになりますが、タイミングを覚えるまでそれなりの時間を取られる程シビアです。シビアにする事でラスボスの凶悪度を伝え、物語の深みを作る事には成功していますが、代わりにプレイヤーの負担は大きくなっています。
短時間プレイとゲームの作りこみ
ポックのともだちのプレイ時間は30分~1時間です。テーマは短い時間の中に凝縮して詰め込まれており、短時間ゲームでありながらクリア時の満足度は大きなものです。キャラや風景は繊細に動くしグラフィックも細かく作られており、1秒1秒が楽しめるコンテンツ作りをされている事が伺えます。
「この素晴らしい世界観にもっと浸りたかった」と思えるゲームです。ポックのともだちの不満として「ゲームが短かすぎる」との感想をよく見かけます。しかし、ゲーム時間を長くなるよう開発するとゲームの質が衰えてしまう事が想像できるぐらい細かな部分まで考えて作ってあります。だから、この指摘はあまりよろしくないでしょう。しかし、それでももっと長くプレイできるようにして欲しかったです……。
ゲーム中に出てくる間違い探しゲーム。間違いを探していいし、適当にタップを続ければ自動的に見つけれます。このような難易度と正反対のラスボスの強さ……。
花蟲について
アニメーション、イラストを制作するデザイナーです。また、ポックのともだちを含むゲームをはじめ、ミュージックビデオ、動画などのインタラクティブ作品も発表しています。その作風はキモカワ・シュール・ダークなどアート的なホラーテイストを得意としています。御伽話の暗黒面をイメージしたような作風です。あくまでホラーテイストを主としながらも。ポックのともだちなどのように明るい作風の作品も存在します。経歴や受賞暦など詳しいプロフィールはニコニコ大百科が詳しいのでそちらを参考にして下さい。また、公式サイトではPC版「ポックのともだち」他いくつかのPC用フラッシュゲームが無料で遊べます。
花蟲関連リンク
まとめ
短時間でクリアできる作品ながら、友情をテーマにした物語を独特の世界観で表現した高クオリティのポイントクリックアドベンチャーです。ゲーム性より物語を楽しませる点に力を入れており心温まるアートを楽しみたい方はプレイしてみるとよいでしょう。
ゲーム情報
- ジャンル:ポイントクリックアドベンチャー
- 作者公式ページ:花蟲 - Hanamushi -
- メーカー:Cygames ちょげつく