薬害の歴史
副作用に対する基本的な考え方
●副作用や薬害は、医薬品が十分注意して適切に使用されたとしても起こりうるもので、副作用は誰にでも起こりうる。
主な薬害訴訟と成立した制度
サリドマイド訴訟
■催眠鎮静薬として発売されたサリドマイド製剤を妊婦が服用したことで、新生児に先天的な異常が発生したことによる損害賠償訴訟
●サリドマイド訴訟とは、妊娠している女性がサリドマイド製剤を使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生したことに対する損害賠償訴訟である。(南関東R2-017)
■サリドマイド事件が起こった原因は、血管新生阻害という副作用にあった。
■S体とR体の光学異性体があり、問題となったのはS体の作用
●サリドマイドの光学異性体のうち、R体のサリドマイドを分離して製剤化しても催奇形性は避けられない。(南関東R2-017)
■血液胎盤関門を通過して胎児に移行する
●妊娠している女性がサリドマイドを摂取した場合、サリドマイドは血液ー胎盤関門を通過して胎児に移行する。
■日本では出荷停止・回収の遅れが問題となった
●1961年11月、西ドイツ(当時)のレンツ博士がサリドマイド製剤の催奇形性について警告を発したにもかかわらず、日本では、出荷停止は1962年5月まで行われなかった。(南関東R2-017)
スモン訴訟
■整腸剤として販売されていたキノホルム製剤の服用によって亜急性脊髄視神経症になったことに対する損害賠償訴訟である
●スモン訴訟とは、整腸剤として販売されていたキノホルム製剤を使用したことにより、亜急性脊髄視神経症に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。(南関東R2-018)
■一般用医薬品としても販売されていた
●スモンの原因となったキノホルム製剤には、一般用医薬品として販売されていた製品もある。(南関東R2-018)
■初期には膨満感から激しい腹痛を伴う下痢、次第に下半身の痺れや脱力、歩行困難などの症状が現れる
●スモンはその症状として、初期には腹部の膨満感から激しい腹痛を伴う下痢を生じ、次第に下半身の痺れや脱力、歩行困難等が現れる。(南関東R2-018)
■サリドマイド訴訟、スモン訴訟を契機として、1979年に医薬品副作用救済制度が創設された
●スモン患者に対しては、施術費及び医療費の自己負担分の公費負担、重症患者に対する介護事業等が講じられている。(南関東R2-018)
HIV訴訟
■血友病患者が、HIVが混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である
●HIV訴訟は、血友病患者が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である。国及び製薬企業を被告として、1989年5月に大阪地裁、同年10月に東京地裁で提訴された。(南関東R2-019)
■国はHIV訴訟後、1999年に「誓いの碑」を竣工して、再び発生させることがないように努めることを誓った
■承認審査体制の充実、製薬企業に対し従来の副作用報告に加えて感染症報告の義務付け、緊急輸入制度の創設などを内容とする改正薬事法が1996年に設立された
CJD訴訟
■脳外科手術に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してCJDに罹患したことによる損害賠償訴訟
●CJD訴訟は、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してCJDに罹患したことに対する損害賠償訴訟である。(南関東R2-020)
認知症に類似した症状が現れ、死に至る神経難病
●CJDは、次第に認知症に類似した症状が現れ、死に至る重篤な神経難病である。(南関東R2-020)
原因は細菌でもウイルスでもなく、たんぱく質の一種であるプリオンである
●CJDは、タンパク質の一種であるプリオンが原因であるとされている。(南関東R2-020)
訴訟後、2002年薬事法改正に伴い、独立行政法人医薬品医療機器総合機構により「生物由来製品による感染等被害救済制度」が創設された
●CJD訴訟は、生物由来製品による感染等被害救済制度が創設される契機のひとつとなった。(南関東R2-020)