百花繚乱! 「バトル・ロワイアル」とゲームの20年を振り返る
PUBG Corp.によるバトル・ロワイアルゲーム『荒野行動』に対する訴訟のニュースは、プレーヤーの中に話題になりました。さらに、4月6日にはTwitter Trendsの一位に登り、投稿数が40万件を超えています。
そこで、「バトル・ロワイアル」ゲームとは一体なんなのか。どこから誕生し、誰がこの刺激的で緊張感満載な世界観を現実にもたらしたのか。それをイチから解説していきます。いっしょに歴史をめぐって、バトル・ロワイアルゲームの状況とこれからのバトル・ロワイアルについて深く知っていきましょう。
バトル・ロワイアルとは?
バトル・ロワイアルの元ネタはどこ? といえば、日本に決まってるといっても過言ではありません。小説家の高見広春によって創作されたホラーフィクション「バトル・ロワイアル」は、バトル・ロワイアル系の鼻祖と言えます。
この小説は少年たちが殺し合うホラーフィクションです。架空の独裁政権を持つ東アジア大共和国で発生し、この国には「計画」という政策があります。毎年、クラスがランダムに選ばれ、彼らが島に送り込まれ、最後のひとりが生き残るまで殺し合いが行われるという、狂気に満ちた内容です。
その内容は大きな話題を呼び、ベストセラーになりました。しかし、1999年角川で開催されたホラー・フィクションコンテストでは、審査員に「非倫理的」「不快な読み物」だと考えられ、賞は授与されませんでした。
▲映画「バトル・ロワイアル」より
この小説は受賞しませんでしたが、脚本家の深作健太監督がバトル・ロワイアルというジャンルの可能性を見抜き、彼の実父で映画監督の深作欣二に推薦しています。その後、父と息子の力を合わせ、2000年に映画「バトル・ロワイアル1」が公開されました。ファンから絶賛を浴びた映画は大ヒットし、興行収益は31億1000万円に達しています。この映画は日本の映画史上に名を残し、バトル・ロワイアルというワードも話題になりました。
▲「バトル・ロワイアル」の登場人物たち
ここで、映画のあらすじを少し振りかえっていきましょう。
全国の中学三年生のクラスから、毎年ひとつがランダムに選ばれていた。 行動範囲の制限された無人島に送り込まれた生徒たちには、地図や食糧、さまざまな武器が差し出されていく。 それらを使い、だんだん狭くなる生存の空間の中で、最後のひとりが生き残るまで殺し合う。 |
バトル・ロワイアルゲームのまさに原型となるこの小説が生まれたのは、ゲームより約17年も前のことです。
バトル・ロワイアルの発展
「バトル・ロワイアル」の小説や映画に触発され、グループのキャラクターを生死の決闘に投げ込もうという作品が次々と登場します。2000年に出版された漫画「GANTZ」も、「バトル・ロワイアル」とよく比較されました。このような「死亡ゲーム」系の漫画がたくさん出てきつつあったのです。
外国で人気の "Hunger Games"(2012)と漫画シリーズ "Avenger Arena"(2012)もまた、明らかにバトル・ロワイアル系を支持しています。
さらにマーベルは、スーパーヒーローたちが活躍するマーベル・シネマティック・ユニバースにおいて映画「バトル・ロワイアル」をそのまま持ち込みました。12人の若いスーパーヒーローたちを競技場に投げ込み、バトルロワイアルのような死闘を行わせているのです。漫画の表紙も映画「バトル・ロワイアル」のポスターを大いに意識しており、映画にリスペクトを表しています。
▲マーベル・シネマチック・ユニバース
急上昇中のバトル・ロワイアルゲーム
バトル・ロワイアルが大ブレイクしたのは小説だけではありません。「バトル・ロワイアル」と同名のウェブゲーム『Battle Royale』は、日本のバッカス氏によって開発されました。しかし、具体的なリリース時期は特定しにくく、すでに運営が停止になっています。
その後、2Y氏がバージョン1.19の『Battle Royale』を改善し、『Battle Royale Ultimate』を制作しました。このゲームは2003年誕生し、今も運営され続ける息の長い作品となっています。
▲Battle Royale Ultimateより
Battle Royale Ultimateは、RPGカテゴリーに属するWebゲーム(MUD)です。ユーザーがゲーム登録時に、自分の基本設定と基本属性を設定します。学校のキャンパスから出発して、すべてのユーザーが映画のようにランダムで物資を入手し、互いを倒し合っていくのです。
▲Battle Royale Ultimateより
ユーザーは自分の意思で行きたいエリアを検索し、ほかのユーザーと戦うかもしくは身を隠すかが選択可能です。また、お金、ショップ、経験値、武器レベルなどなど、伝統的なRPG要素が加えられています。
ゲームは10人1組の形でスタート。戦ってもよし、毒を盛ってもよし。ナイフか銃を使ってもオーケー。倒し合いの中で、最後まで生き残れた人が勝利者になります。再現度の高いゲームルール設定、楽しさに富むRPG要素、ランダムに発生する多様な事件がゲームに大きな成功をもたらしました。
興味のあるかたは、こちらのリンクからご覧ください。http://www.b-r-u.net/
その後、映画「ハンガーゲーム」が全世界で大ブレイクしたと同時に、『Minecraft』のユーザーたちが沢山の「ハンガーゲーム」MODゲーム(※)を制作しました。ゲームの中でユーザーがひとつの場所に集まり、箱を開けたり、武器を奪いあいながら敵を倒します。最後まで生き残ることが唯一の目標になったのです。
- ※:ゲーム内容を改造できるシステムの一種
▲Minecraft MODより
バトル・ロワイアルゲームとシューティング
ゲーム技術の発展とともに、シューティングゲームが新時代の寵児になりました。そして、FPS/TPSカテゴリー寄りのバトル・ロワイアルゲームもまた、頭角をあらわし始めたのです。もっとも最初にFPS/TPSとバトル・ロワイアルを融合させたのが、2012年に発売された『ARMA2』です(後に本文で触れる『Day z』前身)。
そのゲームデザイナーがDean Hallです。2010年、イギリスの軍官であった彼は、ジャングルサバイバルトレーニング中に怪我をしてしまいます。やむをえず、兵士生涯の最後のトレーニングを中退しなければならなくなったのです。
この失敗の経験がDean Hallに示唆を与え、彼は『ARMA2』の製作チームBohemia Int.に履歴書を提出します。ARMA2を元にした、ジャングルで生き残るためのゲームを作りたいと表明したのです。そのゲームの中には任務と目標はなく、またユーザーが簡単に蘇ることも出来ません。最後まで生き残るのみが目的なのです。
もっとも最初の『Day Z』MODバージョンでは、ユーザーは広い地図の中でゾンビやほかのユーザーと闘い、ランダムで変わる天気システムにも対応する必要があります。また、ユーザーは自分の体力、体温などにも注意を払わなければなりません。この豊富な設定システムが、本作に人気を呼びました。
本作がリリースされた後ほどなくして、Bohemia Int.スタジオが『Day Z』のインディーゲームを製作することにし、数百万以上も販売されています。
その後、もう一人のゲーム製作者のBrendanが『Day Z』MODの設定が複雑すぎることに気づき、自ら新しいMODの制作に携わりました。彼が制作したMODでは、20名のユーザーがヘリで無人島に運ばれ、島の上でさまざまな武器を探しながら戦いを展開します。もちろん、バトル・ロワイアルゲームらしく、ゲーム開始時間の推移にあわせてユーザーの行動エリアが制限されていくのです。
これがPUBGゲーム製作者の初登場でした。本作リリース後の初月に20万ダウンロードを突破し、著しい成績を上げています。
この後、H1Z1スタジオが『Day Z』の成功を見たあとにすぐ、Brendanとコンタクトを取っています。彼をゲーム顧問として招き入れ、『King of the Kill』の製作に参加させたのです。Brendanが参加した後にゲームの内容は簡易化され、地図の面積と参加人数が増やしました。King of the Kill完成後はゲーム世界で再び大ブレイクし、非常に多くのゲーム実況者の関心を呼んだのです。
▲King of the Killより
百花繚乱のバトル・ロワイアルゲーム
2017年に入ってからは、バトル・ロワイアルゲームが一気に爆発。PC端末向けのPUBGの全世界販売数が3000万を記録し、ランキングの王座に55週間座り続けました。のちにリリースされた『Fornite』は総ユーザー数が4500万を超えています。
▲Forniteより
SP端末では『Bullet Strike: Battlegrounds』、『Last Day on Earth』、『Grand Battle Royale』、『荒野行動』、『Rules of Survival』、『Free Fire』、『Black Survival』、『Mini DayZ』などのスマホ向けに作られたバトル・ロワイアルゲームが相次ぎ出てきています。ユーザーがいつでもバトル・ロワイアルというゲームカテゴリを楽しむことができるようになりました。バトル・ロワイアルという魅力的な小説があったからこそ、今の活況があるのです。
▲大ブームのバトル・ロワイアルゲームたち
▲荒野行動より
まとめ
バトル・ロワイアルの歴史を振り返ると、あらゆるジャンルを網羅しているカテゴリーです。サスペンスや戦争のカテゴリーのように、小説、映画、ゲームまでも網羅しているのです。すべての基礎となった「バトル・ロワイアル」の作家である高見広春さんに感謝します。高見広春さんのおかげで、この素晴らしいジャンルを見ることが出来たのです。
また、深作欣二さんと深作健太さんにも感謝します。彼らのおかげでスクリーンの前でこの作品をを世界より多くの人たちに知ってもらうことができました。
2018年のGame Developers Conferenceにおいて、PUBG制作者であるBrendanが同じカテゴリーの作品「Fortnite」を評価した時に言ったように(※)、これからも多くのバトル・ロワイアルの作品が出現し、もっと多くの人に愛されることを大いに楽しみにしています。
- ※:『Fortnite』:“It’s great that the battle royale space is expanding and Fortnite is getting battle royale game mode in the hands of a lot more people.”